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旧石器時代美術

旧石器時代(→石器時代の「旧石器時代」)につくられた人類最古の美術。10万~4万年前の遺跡から刻み込みのある骨などがみつかっており、これらを原始的な美術とみなすかどうか、専門家の意見はわかれている。南アフリカ共和国のブロンボス洞窟(どうくつ)では、オーカー(べんがら:酸化鉄)の塊の表面に意図的にきざまれた幾何学模様や、貝製のビーズが発見され、象徴的活動の最古の証拠として話題をよんだ。しかしこれを美術とよんでよいかどうか、確かなことはわからない。

約4万年前以降の後期旧石器時代になると、さまざまなかたちで明確な美術作品がつくられはじめる。このような芸術活動は、ヨーロッパのクロマニョン人の間でとりわけ盛んであったが、他地域にも証拠があり、たとえばオーストラリア先住民アボリジニの壁画の伝統も古いといわれている。

ヨーロッパでは、彫刻として、狩猟の対象である動物や多産の象徴と考えられる人物像などがつくられた。これらの人物像は性的特徴が誇張され、妊娠しているような姿であらわされている。さらに洞窟などの壁には、動物や人の彩色画や線刻画が描かれた。これらの目的は明確でないが、呪術的(じゅじゅつてき)な役割をはたしたと考えられている。

洞窟壁画は、ヨーロッパではとりわけ西南フランスや北スペインで集中して描かれた。代表的なフランスのラスコー洞窟とスペインのアルタミラ洞窟には、ウマやバイソンなどのみごとな彩色画がのこされている。壁画の顔料としては、べんがらや炭などがもちいられ、これらを粉にして動物の脂にといたものを、指や何らかの筆などをつかって描いたらしい。

近年、フランスでは洞窟絵画の発見があいついでおり、アルデシュ渓谷で1994年にみつかったショベ洞窟絵画は、炭素14による年代測定(→年代測定法の「炭素14法」)で約3万年前のものであることが確認された。これはラスコーやアルタミラの年代とくらべ1万数千年もさかのぼるものである。また、ラスコーの南西約30kmにあるキュサック洞窟では、2000年に3万5000年前にさかのぼる可能性のある線刻絵画が多数発見された。長さ約1kmの洞窟内には最奥部を中心に、石器をつかって人間の女性やサイ、ウマ、大きな牙(きば)と長い体毛のあるマンモス、約4mもある大きな野牛などが生き生きと線刻されている。