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金属
I. プロローグ

金属に分類される元素は、おおむね次のような物理的性質をもつ。

(1)常温では固体。ただし水銀は例外。
(2)たたくことで、のばしたり広げたりできる(展性:延性)。
(3)熱や電気をよくとおす(導体:熱伝導:電気伝導)。
(4)みがくと金属光沢をはなつ。
(5)不透明。ただし、極度にうすい箔(はく)は例外。
(6)固体は結晶構造をもつ(結晶)。

金属と、金属の性質をもたない非金属は、周期表上では、13族元素のホウ素(原子番号5)と17族元素のアスタチン(原子番号85)を線でむすび、その斜めの線上および右側が非金属、左側が金属となる。ただし、原子番号1の水素は非金属である。

原子番号93以降の超ウラン元素をのぞく92種元素のうち、非金属元素は22種、金属元素は70種である。斜めの線上とその周辺に位置するホウ素、ケイ素(原子番号14)、ヒ素(原子番号33)、テルル(原子番号52)、アスタチンおよびゲルマニウム(原子番号32)、アンチモン(原子番号51)、ポロニウム(原子番号84)は金属と非金属の両方の性質をもっている。

II. 金属の分類

金属元素は、似た化学的性質をもつものとして、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素(ランタノイド)、4族元素(チタン族元素とも。チタン、ジルコニウム、ハフニウム、ラザホージウム)、5族元素(バナジウム族元素とも。バナジウム、ニオブ、タンタル)、6族元素(クロム族元素とも。クロム、モリブデン、タングステン)、7族元素(マンガン族元素とも。マンガン、テクネチウム、レニウム、ボーリウム)、鉄族元素(鉄、コバルト、ニッケル)、白金族元素(ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、白金)、11族元素(銅族元素とも。銅、銀、金)、12族元素(亜鉛族元素とも。亜鉛、カドミウム、水銀)、アクチノイドに分類されている。ただし、これらが唯一の分類方法ではない。

金属は、比重(密度)が4または5以下のものを軽金属、それ以外のものを重金属とよぶことがある。また、存在量が少なく、耐腐食性をもつものを貴金属といい、金をはじめ銀、白金、パラジウム、イリジウム、ロジウムなどである。それに対し、かつては金・銀以外のものを卑金属(ひきんぞく)とよぶことがあった。

III. 金属の性質

金属元素は他の金属元素や非金属元素と結合し、化合物や固溶体、あるいは複雑な成分の混合物を形成する。2種類以上の金属、または炭素などの非金属元素と金属との組み合わせによる物質は、合金とよばれる。なかでも、水銀に他の金属をとかした合金はアマルガムとして知られる。

金属と一般に定義される元素だけに範囲をしぼっても、金属の性質には元素ごとに大きな幅がある。大部分の金属は銀白色だが、ビスマスや銅は赤みをおび、金は黄色である。また金属によっては、2種以上の色を呈する多色性の現象がみられる。金属の融点は、最低が水銀の-38.8°Cからはじまり、最高はタングステンの3407°Cまでと、広範囲にわたっている。もっとも密度の高い金属はイリジウムで、22.61g/cm³だが、最低のリチウムでは0.534g/cm³しかない。

金属の結晶構造は体心立方晶、面心立方晶、最密六方晶のうちのいずれかとなる。ただし、インジウムやスズ、タリウム、ビスマスなど、非金属に近い性質のものには正方晶系、斜方晶系などの結晶構造をとるものもある。

電気伝導率は、ビスマスが金属の中でもっとも低い。反対に、常温でもっとも電気伝導率が高いのは、銀である。また、大部分の金属では、電気伝導率は不純物をくわえることで低下する。金属はどれでも加熱すると体積が膨張し、冷却すると収縮するが、白金とイリジウム合金などでは、膨張の度合いが極端に小さい。

1. 物理的性質

金属は強度が高く、強い圧力や張力にたえる。金属の性質は種類によってさまざまだが、一般に次の性質をそなえている。

(1)硬度が高く、金属表面は歪(ゆが)みや磨滅の影響をうけにくい。
(2)抗張力が大きく、張力による破損がおこりにくい。
(3)弾性があり、変形をうけても元の形に回復する。
(4)可鍛性があり、圧力や衝撃をかけて成形できる。
(5)疲労に対し抵抗力があり、繰り返しの圧力や変形にたえる(金属疲労)。
(6)展延性があり、破壊をうけずにひきのばすことができる。

2. 化学的性質

金属の原子価は、ほとんどの金属化合物でプラスの値をとる。このことは、金属元素が他の原子に電子をあたえて、金属結合(化学結合の一種)することを意味している。また金属の酸化物は塩基性をしめす傾向がある。一方で窒素、硫黄、塩素など典型的な非金属元素の原子価は、ほとんどの化合物でマイナスの値をとる。すなわち非金属元素は他の電子をうばって化学結合をつくり、非金属元素の酸化物は酸性をしめす。

金属原子は、原子から電子を放出するのに必要なイオン化エネルギーは小さいので、化学反応でたやすく電子をうしない陽イオンとなる。つまり、金属原子は電子をあたえる還元剤として作用し、プラスの電荷をもった金属イオンは塩化物イオン(Cl-)、硫酸イオン(SO42-)、炭酸イオン(CO32-)などの陰イオンとむすびついて塩をつくるのである。イオン:イオン化:イオン化傾向

IV. 金属元素の電子構造

高い熱伝導性・電気伝導性をもつ金属の性質から、科学者は金属の電子構造を推定しようとした。最初に考案された電子構造のモデルは、「プラスの電荷をもった個々の金属の原子核の周りに、マイナスの電荷をもった自由電子の海が均質に広がっている」というものだった。金属原子の間にはたらく結合力は、プラスの電荷をもつ金属原子核とマイナスの電荷をもつ自由電子の均質な海との間にはたらく静電気的な力によるものとみなされた。金属が高い伝導性をもつことの原因を、自由電子の動きによるものだとしたのである。しかし、このモデルにしたがって計算すると、金属の比熱は実際よりも高い値となってしまう。

1928年にドイツの物理学者アーノルト・ゾンマーフェルトは、金属の電子は量子化(量子)された特定の電子軌道のみをうごくとして、新しいモデルを提案した。このモデルによると、金属原子の電子軌道は、完全に電子でみたされた低いエネルギー状態の軌道と、部分的に電子でみたされた高いエネルギー状態の軌道とにわけられる(原子:量子論)。このモデルは同年、スイス系アメリカ人科学者フェリクス・ブロッホによって、さらに後にはフランスの物理学者レオン・ブリュアンによってとりいれられた。今日では、このモデルを発展させたバンド理論によって、金属固体の電子構造が説明される。

1. バンド理論

バンド理論によると、価電子として隣接する原子との結合にあずかるのは、金属の電子の一部だけである。価電子の属する電子軌道は隣接する個々の原子の間で重なりあい、価電子は別々の原子によって広範囲にわたって共有されることになる。つまり電子軌道の重なりで金属全体をおおう巨大な電子軌道が生まれ、価電子はひとつひとつの原子からはなれ、広がった電子軌道を自由にうごくようになるのである。1個1個の原子の電子軌道はさまざまなエネルギー状態にあるため、金属全体をおおう電子軌道の集合体は帯のように連続したエネルギーの分布をしめす。これをバンドとよぶ。

ひとつひとつの原子は、特定の数の電子にかこまれることで安定な状態になる。電子が特定の数に達しない場合、原子は空の電子軌道をもつとみなすことができる。電子が空の軌道をうめるには一定量のエネルギーが必要で、電子はエネルギーの低い順に空の軌道をうめていく。しかし、金属の原子では価電子の数が少なく、共有した価電子で空の電子軌道のすべてをうめることができない。したがって、電子軌道の集合体である金属固体のバンドは、低いエネルギーの電子によって部分的にしかみたされず、電子の存在しない空の領域をもつことになる。この空の領域があるため、電場や熱によってエネルギーをあたえられると、金属の電子は容易に原子間を移動することができる。これが、金属が高い伝導性をもつ理由である。

バンドは完全に連続しておらず、ところどころに隙間(すきま)がある。この隙間の間隔はバンドギャップとよばれ、電子のもつエネルギーの差に相当する。低いエネルギー状態と高いエネルギー状態との間にバンドギャップが存在する場合、電子がバンドギャップをとびこえるには、バンドギャップに相当するエネルギーを必要とする。金属以外の物質のバンドでは、完全に電子でみたされた低いエネルギー状態の領域と、電子が存在しない高いエネルギー状態の領域との間に、バンドギャップが存在する場合がある。バンドギャップが小さく、加熱によって電子が容易に移動できる物質が半導体であり、バンドギャップが大きく、電子の移動が困難な物質が絶縁体である。

金属組織学:冶金