うつ病
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うつ病
IV. 治療

うつ病は、精神病の中でももっとも治療しやすい病気である。最近では、治療の中心は薬物療法で、補助的に精神療法がおこなわれている。現在つかわれている薬には、三環系抗うつ薬、四環系抗うつ薬とモノアミン酸化酵素阻害薬(MAO阻害薬)などがあるが、近年はセロトニンやノルアドレナリンの作用を増強し、うつ病を改善するSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)やSNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)といった薬が治療薬の主流となってきた。抗うつ薬

1. 薬物療法
1.A. モノアミン酸化酵素阻害剤など

モノアミン酸化酵素阻害剤はチラミンという物質と相互作用があるので、服用中はチラミンをふくむチーズ、ビール、ワイン、鳥の肝などはさけなければならない。三環系抗うつ薬では、アミトリプチリン、デシプラミン、イミプラミンなどがもちいられる。

また、双極性障害の躁状態には、炭酸リチウムがつかわれる。副作用があるが、少量ならば気持ちの不安定をおちつかせる効果もある。

1.B. SSRIなど

最近では、SSRIが、モノアミン酸化酵素阻害剤や三環系抗うつ薬にかわってつかわれるようになっている。また、SNRIも普及してきた。SSRIのプロザックという薬は、1988年にアメリカで認可され、ベストセラー薬になった。日本では、99年にSSRIのフルボキサミンの使用がみとめられ、その後もSSRIのバロキセチンやSNRIのミルナシプランが認可されている。

セロトニンやノルアドレナリンは、脳の神経細胞(ニューロン)間の情報伝達をおこなっている神経伝達物質である。この物質がうまくつたわっていると、元気や意欲が出るが、そうでないと、うつ病を発症すると考えられている。

神経細胞間では、神経細胞の末端(前シナプス)から放出された神経伝達物質が、シナプス間隙(かんげき)というすきまをとおって、次の神経細胞の末端(後シナプス)にあるレセプター(受容体)にとりこまれることによって、情報がつたわる。このとき、とりこまれなかった伝達物質は、前シナプスで再吸収(再取り込み)されるので、次の伝達物質が前シナプスから放出されるまで、シナプス間隙をながれる伝達物質の量は減少する。

SSRIは、神経伝達物質のうちセロトニンだけにはたらきかけ、前シナプスでのセロトニンの再吸収をさまたげる薬剤である。うつ状態の人は、シナプス間隙をながれるセロトニンの量が少ないため、SSRIによってセロトニンの再吸収がとまれば、セロトニンの流量がふえ、次の神経細胞への情報伝達がうまくいくようになる。したがって、抑うつ気分は改善されると考えられている。また、SNRIの場合は、セロトニンとノルアドレナリン両方の再吸収をさまたげる。

SSRIとSNRIは、以上のようなメカニズムで、うつ病を改善する。効果のほうは従来の薬と大差ないが、副作用が大幅に少なくなっているので、つかいやすく、通院による治療などに適している。

2. 電気痙攣療法

電気痙攣療法(でんきけいれんりょうほう)は、1939年にイタリアで考案された。食塩水にひたした電動子を患者のこめかみの両側または片側にあて、約100Vの電圧で2~5秒間通電する。通電すると患者は意識をうしない、痙攣をおこし、やがて回復する。これを週2~3回、全部で数回から数十回くりかえす。意識をうしなっている間に、うつ状態が改善するのではないかと考えられているが、最近では痙攣をおこさない方法も実施されている。

このようなショック療法は、薬物療法が登場するまではよくおこなわれていたが、さまざまな議論があり、最近ではほとんどおこなわれていなかった。しかし、薬がつかえない場合や効果がみられない場合の治療法として、ふたたび注目をあつめている。日本ではまだあまりおこなわれていないが、重いうつ病が改善されたり、自殺の予防ができることがある。

3. 磁気刺激療法

1985年、経頭蓋磁気刺激法(けいとうがいじきしげきほう)が開発された。頭部に電気コイルをおいて磁気を発生させると、きわめて弱い電流が発生し、それによって大脳の神経細胞が刺激されるという方法である。電気刺激療法にくらべて、安全性が高く、くりかえしおこなう反復経頭蓋磁気刺激法は難治性うつ病の新たな治療法として期待されている。カナダでは、すでに臨床使用がみとめられており、日本でも試験的な使用で効果があったことが報告されている。