電波天文学
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電波天文学
III. 電波天文学の原理

宇宙からやってくる電波は、知られているかぎりではすべて自然現象によってつくられたものである。地球外の知的生命が発信したような電波はみつかっていない(宇宙生物学)。観測された電波がどのように放射されたものか、物理的な仕組みはいくつかわかっている。

1. 放射のタイプ

天体は、電子がでたらめな熱運動をしているために、すべての天体はその温度特有の熱放射を放出している。放射の強度とスペクトルを精密に測定することによって、太陽系の惑星や銀河全体にあるイオン化された熱いガス雲のような天体の温度が計算できる。

しかし、電波天文学で測定される放射には、銀河内と銀河間の弱い磁場の中をうごきまわる荷電粒子が発生する、はるかに強い非熱的な放射もある。粒子のエネルギーがひじょうに高く、速度が光速に近いものはシンクロトロン放射とよばれる。シンクロトロンとは、こうした放射を最初に発見した高エネルギー物理学研究所の名前をとってつけたものである。加速器

非熱的なシンクロトロン放射の電波源も、熱的な電波源も、広い波長域にわたって放射している。それとは対照的に、励起された原子、イオン、分子は、励起状態に特有の不連続な波長で放射している。ひろい波長域にわたる電波は連続放射といい、不連続な電波は輝線放射とよんでいる。

2. 電波望遠鏡

電波の波長は約1mmから1km以上までわたっており、長波長の信号を受信して鮮明な電波像をうるためには、電波望遠鏡を大きくしてやらなければならない。

世界最大の据え付け型の電波望遠鏡は、プエルトリコのアレシボ天文台の、直径305mのパラボラアンテナである。また、可動式の大きなパラボラアンテナは、直径50mから100mで、肉眼で可視光域をみたときに相当する約1分角の解像度をもっている。宇宙からやってきた電波はパラボラの表面から小さなホーンアンテナへとあつめられ、そこから非常に感度のよい電波受信機へとおくられる。受信機の原理は家庭にあるラジオと似ているが、10-17Wというごく弱い信号をも検出することができる。受信機の重要な部分は、性能を高めるために絶対零度近くまでひやしてつかうことが多い。スペクトル線の観測には同時に1000もの周波数にあわせることのできる特殊な受信機がつかわれる。

解像度をより高くするために、いくつものアンテナを干渉計としてつかうことがおこなわれる。これによって、最高の観測状態にある大きな光学望遠鏡にひとしい、約1秒角の解像度がえられる。

このタイプで最大の電波望遠鏡は、ニューメキシコ州ソコロ近くの平原にあるVLAである。VLAは直径25mの27機のパラボラアンテナを、一辺の長さ21kmのY字形に並べたものである。それぞれのアンテナごとに受信機を装備しており、各受信機からの信号を中央にある建物におくって、開口合成法という技術を使って合成し1つのデータとすることで、高解像度の像がえられる。別のタイプの干渉計は、巨大なテレビアンテナのようなアンテナをつかう。イギリスのケンブリッジにあるものは、波長2mの放射を検出するのに60機のアンテナをつかっている。

アンテナを何千kmもはなして設置すれば、さらに高い解像度がえられる。しかし何千kmもはなれている場合には、それぞれのアンテナから1つの施設に直接に信号をおくることは事実上不可能である。そこで、それぞれのアンテナの電波望遠鏡で広域帯のテープに記録し、テープを中央処理施設におくる。

これが超長基線干渉法(VLBI)とよばれる技術であり、100万分の1秒以上の正確さでそれぞれのテープ録音を同期させるために、各望遠鏡で原子時計をつかってあわせている。 VLBIの方法では、月においたバスケットボールの大きさに相当する1000分の1秒角の角解像度が達成できるのである。さらに1984年、アメリカは、超長基線アレイ(VLBA)とよばれる、カナダとの国境からプエルトリコ、ハワイまでひろがる10機の電波アンテナのネットワークを実現した。VLBAでは5000分の1秒角もの角解像度がえられると期待されている。