GPS(全地球測位システム)
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GPS(全地球測位システム)
III. GPSの仕組み

GPSは、地上2万kmの高度で1日に地球を2周する円軌道上にあるGPS衛星と、GPS衛星を追跡・管理をおこなう管理局、それにユーザー(利用者)の受信機から構成されている。

1. GPS衛星

アメリカのGPS衛星は、軌道傾斜角(地球赤道面と軌道面との傾斜角度)約55度の6軌道面にそれぞれ4衛星ずつ配置され、計24衛星で運用される計画であったが、2008年12月現在では30衛星が利用可能である。このGPS衛星からは、位置座標(緯度、経度、高度)および時刻のデータが軍事目的用に暗号化されたPコードと民間用に開放されたC/Aコード(Coarse/Acquisition Code)が刻々と発信されている。利用者は4個以上の衛星からのデータを受信することにより、自分の位置を計算して知ることができる(ただし、緯度と経度をもとめるには3個の衛星だけでも可能で、高度を知るためにもう1個の衛星が利用されている)。衛星からの距離は、衛星から発信された電波が受信機に到達するまでの時間からもとめられる。また、車や航空機など移動体で利用した場合は速度や方位も知ることができる。

GPSでは、信号の発信時間と受信時間との差を計算し、位置を特定している。そのため、GPSの人工衛星には、きわめて正確に時をきざむ4個の原子時計(→時計の「原子時計」)が搭載されている。なお、衛星に搭載された原子時計の相対性理論による誤差は1日当たり約39µ秒(距離に換算すると、約12kmの誤差となる)にもなるため、あらかじめ補正がなされている。そのため受信者は、衛星から発信される信号にふくまれる時間の情報をもとに、常に発信時間をつかむことができる。また、この信号には、衛星の位置を把握するためのデータと、正確な位置特定のために必要な修正データがふくまれ、受信者は受信時間と発信時間の差から、衛星までの距離を計算するが、その際、電離圏や対流圏による信号伝達の遅れを考慮にいれなければならない。衛星までの距離と、信号発信時の衛星の位置がわかれば、受信者は自分の3次元位置を把握することができる。

当初のGPSでは、民間が利用可能なSPSサービス(Standard Positioning Service:標準測位サービス)には意図的にSA(Selective Availability)とよばれる精度劣化操作がほどこされていた。そのため、100mにおよぶ測位誤差が生じていた。しかし、当時のクリントン大統領により2000年5月2日からはSAが解除され、精度は大幅に向上した。現在保証されている精度は2drms(The distance root mean square:放射状測位誤差の自乗平均の正の平方根)といわれている。GPSの場合、定点に受信機を設置して連続して測位をおこなっても、ランダムな測距誤差によって測位点はちらばってしまう。それらの平均位置までの距離を2乗平均して平方根をとったものをdrmsとよんでいる。そして平均値を中心としてその2倍、つまり2drmsが測位誤差の目安とされている。実際には平均位置を中心として、半径2drmsの円の中に全測位点のおよそ95%が入るといわれている。したがって、この数字は小さい方が高精度であるといえる。SA解除前の最大で100mといわれた測位誤差も30m程度にまで向上した。

また、GPS衛星の日付データは、1980年1月6日から何週間経過したかを10桁(けた)の2進数であらわしていたため、1024週までしか対応していなかった。そのため、こうした事態に対応していなかったカーナビゲーション用装置などでは1024週目に入る99年8月22日、週データがゼロにもどる事態が発生した。

2. 管理局

GPS衛星の追跡・管理は、コントロール・ステーションとモニター・ステーションをさす。コントロール・ステーションはコロラド州コロラド・スプリングスのシュリーバー空軍基地に、モニター・ステーションはハワイの空軍基地、大西洋のアセンション島をはじめ、大西洋、インド洋、南太平洋に設置されている。ステーションは人工衛星を監視し、モニター・ステーションであつめたデータをもとに、各衛星の軌道および時計の変化を予測している。予測データは、衛星をとおしてユーザーにとどけられる。時計と軌道の動きが許容範囲をこえないように調整するのも、重要な仕事である。

3. ユーザー

ユーザーは、GPSの信号を受信している軍関係者と民間人の設備をさす。軍関係のGPS受信設備はおもに、戦闘機、爆撃機、ヘリコプター、潜水艦、戦車、ジープなどである。軍隊では基本的な航行補助にくわえ、照準や空軍機による空中援護、ハイテク兵器などにGPSを利用している。

民間でも多くの人間がGPSを利用している。測量士はGPSを利用して測量の時間短縮をはかっている。航空機や船舶は航行ルートの誘導や、空港への着陸および入港にもGPSをつかっている。運搬車や救急車は、GPSの追跡システムを利用して経路をきめている。農業でも、肥料や殺虫剤の散布を監視しコントロールするのにつかわれている。カーナビゲーションや、スペースシャトルにも活用されている。GPS衛星と通信する必要がないため、ユーザーに制限はない。